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    45. 46.おしっこのはなし
    46. 47.メタボリック症候群
院長のエッセイという名のこぼればなし
開院当時から院内で公開してきたエッセイです。
通常の診察では伝えきれない、日常の健康に関するお話、
母として感じたあれこれを紹介いたします。

03.藪医者と藪患者

医者が患者さんの病名を診断しきれなかったり、お出ししたお薬がすぐに効かなかったりすると、患者さんはその医者を「藪医者」と呼びます。しかし、ときによって、その原因は医者ではなく、患者さん側にある場合があります。
わたしはそういう藪患者さんを何人か知っています。私は自分で自分を「めいい」といいます。「名医」ではなく、明るい医者、「明医」です。この明医にかかると、お薬を飲まなくても元気になってくれる患者さんもいます。ところが藪患者さんは、医者のいうことをきかない、薬をちゃんと飲まない、勝手にやめる、他人に違う薬をもらって飲む、などして、本来の治療から、離れていって、治らない状態に陥るのです。それでも体力があって、特に薬の力を必要としない、元来健康な藪患者さんはいいのですが、薬の種類や、病気の種類によっては正しい治療経過を経ないと治らないものもあります。もちろん、本当に医者が藪の場合もあります。患者さんの出しているサインに気づかずに、思いこみで治療を継続していて、ちゃんと治してあげられない場合もあります。患者さんも医者も藪で無いようにするためには、双方の情報の交換を十分することがいいでしょう。 一回薬をのんで、治らないから、「やめてしまう」のでなく、ある程度継続した上で、効果や、症状の変化、副作用などについて、主治医にきちんと報告をし、必要な場合にはセカンドオピニオン(違う先生に意見を聞く)を求めてもいいと思いますが、経過や思いあたることなど、詳しく、主治医に報告することが大事です。医者の方も全ての病気のことを全て、知っているわけではありませんし、間違うこともあります。でもその間違いから、早く正しい方向に修正ができるかどうか、その主治医が、本当の名医になってくれるかは、一人一人の患者さんとのいろいろな経験の積み重ねが必要なのですから、あなたが、お医者さんを育てるつもりで、いろいろ教えてあげてください。(だから私は、自分の患者さんがセカンドオピニオンを求めた場合には、その結果も知りたいと思っています。)黙って他の先生にかかるより、紹介状をもらっていくことをすすめます。それまでの薬が効かなかったという情報が、次の先生が、正解にたどり着くまでの時間を短縮することができるでしょうから。

説明する女医さん

私の薮患者さんナンバー1は…

頑強な体格の公務員のSさん。仕事がいそがしくて、疲れた顔で、口の周りに小水疱状の皮膚病を発症して来られました。私は、口唇ヘルペスと診断し、お薬を出しました。それから、しばらくして、「藪医者だな、先生の薬では治らん」といって来られました。違う薬に変えてみました。(ヘルペスの薬を1週間以上使って治らないのであれば、ヘルペスでは無いと判断したからです。)その後、違う薬をいろいろ使いましたが、もちろん(藪患者さんなので)治りません。ついに、皮膚科に受診することになりました。総合病院の皮膚科でいろいろ調べた結果「ヘルペス」と診断され、私がはじめにお出ししたのと同じ薬が出ました。それで、それなりの時 間を要して、治りました。今は元気に活躍されています。後で聞くと、はじめの薬をすぐ「効かない」ときめつけたSさんは次に来るまでちゃんと使っていなかったようです。こちらも「効くまでに時間がかかりますよ。」と言い忘れていたのでどっちもどっちですが、おかげで、藪医者と、藪患者と呼び合う仲になってしまいました。Sさんは元来お元気で、正解にたどりつくのが少し遅れても、治ることができましたが、でも、はじめにまじめにお薬を使ってくれていたら、もっと早く治せたのに、と思います。ましてや、遠回りしたことによって取り返せない結果になることもあります。藪患者さんにはならないよう、気をつけましょう。

自分にとって都合のいい話

「巨峰を12粒毎日食べると記憶力がよくなる。」私があるある大辞典でみたのは、物忘れを予防するのに必要な×××という物質(なんていうのか忘れました。)が巨峰の皮の裏に多く含まれていて、一日量として、12個分摂取すればよい、という内容だったと思います。科学的に12個の巨峰を食べさせた実験をして、出した結論ではありませんでした。次の日スーパーでは巨峰とピオーネは大売り出し、でも、ずっとそれを続けている人はあまり無いようです。藪患者さんが陥るのはテレビや友達の話を一部分だけきいて、自分に都合のいいところを採用し、自分の体を直接診察して、その体に合った治療法を示してくれる主治医の、自分に都合の悪い意見を却下する現象です。「そのテレビはあなたの病気にその食品がいいといっていましたか?」「その友達はあなたと同じ病気のかたですか」半分あきれながら、でも、本人さんに納得してもらった上で、ちゃんと正しい治療にたどり着きたいので、時には親身に、時には半分叱りながら、会話をつづけていく明医の私です。 医者仲間、薬剤関係者にとって、思いっきりテレビのみのもんたさんは迷惑な人です。(ザ・ジャッジのみのさんは好きです。クイズミリオネアのみのさんは間をとりすぎだと思います。)

名患者とは…?

さあ、藪患者さん、自分の主治医を名医に育てましょう。藪になるまえはタケノコ医者、タケノコにもなれない間は土手医者と呼ぶのですが、(もちろん正式名称ではありません。)会話という水と、正直な報告という肥料をあたえて、新芽のできたての、新米医者も銘木に育てましょう。そしてあなたも名患者です。 私の知っている名患者さんは糖尿病歴40年のMさん、「先生の生まれる前から、私はこの病気とつきあっているのよ。」と(実は私は40歳を越えていますが)「この病気のことは誰よりも知っているわ。」といいつつ、前回受診から今回までにあった体の変化を、そのときのご主人の対応の仕方まで添えて、詳しく報告してくださいます。
病名の欄はいっぱいだし、他院からもらっているものまであわせると10種類以上の薬を服用されていますが、どの患者さんよりもお元気です。死亡診断書を書く名誉を私に任命してくれていますが、もしかしたら私より長生きかしらと思えます。みのもんたさんは悪い人ではありません。確かにいいこともいっぱいいっています。 情報は聞く側がちゃんと取捨選択しなければなりません。
「良薬は口に苦し」と、昔からいいますが、「良きアドバイスは耳に痛し」と思って、自分に都合が悪いことを理由に却下せずに、治療を正しい方向へ向かわせるように、主治医と患者が、協力するのがいいでしょう。

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