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院長のエッセイという名のこぼればなし
開院当時から院内で公開してきたエッセイです。
通常の診察では伝えきれない、日常の健康に関するお話、
母として感じたあれこれを紹介いたします。

06.インフルエンザのはなし

今回は季節柄、インフルエンザの話をしましょう。サーズ(SARS)との関連で、この冬はインフルエンザについて、勉強しておくのがいいと思います。
SARSもインフルエンザもふつうの風邪の多くもその病原体はウィルスです。ウイルスは細菌(いわゆるばい菌)や真菌(カビの仲間)より、小さい体をしていて、構造も細菌や真菌とは多少違います。そのために、細胞壁を攻撃するような一般の抗生物質では殺せないのです。最近、よい抗ウィルス薬が開発されてきていますから、ウィルスによって、のむタイミングによって、有効な治療はありますが、そのためにはそのタイミングなどを知っておく必要があります。
ふつう風邪という場合はその病原菌が何かを調べないことが、多いです。というのは、ウィルスの検査は時間がかかって、結果がでるころには、ふつうの風邪なら、治ってしまっていることが、多いこと、病原体が、なにかによって、治療法があまり変わらないことが、理由です。風邪と一言でいっても、おなかにくる風邪もあれば、咳がきつい風邪もあります。のどに来る風邪もありますし、鼻水とくしゃみが止まらないタイプもあります。おそらく、それぞれ、 ウィルスが違うか、ウィルスの亜型が違うからでしょう。(抗生物質が効く細菌性の病態が合併している場合もあります。) それでも、肺炎とか、髄膜炎、腎盂炎とか、心内膜炎などという病名がつかない、ふつうの発熱、咳、鼻水、下痢、などの症状であれば、症状に合わせてのお薬(対症療法)で、良くなっていくでしょう。ただし、肺炎にしろ、髄膜炎にしろ、症状の出始めが、風邪様症状のことが多く、風邪だと思っていたら、実は、重傷の感染症だったという場合があります。前に放っておいて、悪くなってからみてもらって叱られるより、軽いうちにいって笑われた方がいいという話をしましたが、風邪だと、タカをくくって放っておくことは決して勧めません。ちゃんと、回復にむかう努力をしましょう。

ばいきん

よく、患者さんで、明日、絶対仕事を休めないので、今日中に治してくれ、という方がおられます。わたしは明医だけれど、今日初めて診た患者さんの風邪をその一日で、治す自信は全くありません。
だから、「その考えを捨てなさい。そうした方が、早くなおります。」と申し上げます。大抵のウィルスは人間(宿主)が抵抗力が落ちた状態で、体に侵入し、増殖をはじめますので、十分な休息と栄養、水分補給、精神的安定が得られれば、時間がくれば、退散してくれます。だいたい、ウィルスが行き過ぎる時間は2週間ぐらいといわれています。(もちろん、宿主の状態にもよりますし、ウィルスの種類にもよりますが、)その2週間が待ちきれないので、みんなお薬をもらいに、診療所にやってくるのでしょうが、今の医学の常識のなかでは、なにかわからない、ウィルスにたいして、一晩で、死滅させ得るお薬はないようです。

ここで、インフルエンザのはなしです。

インフルエンザはふつうの風邪とちがい、症状もきつく、肺炎を合併したりすることもあり、高齢者や、乳幼児などでは、死亡報告が(この数年にも)ある、怖いウィルスです。そのため、私のところの小さな診療所でも、インフルエンザ対策は、いくつかたてています。
一つは、診断するためのキットを用意すること、2つ目は抗ウィルス薬を注文して用意すること、それと平行して、予防接種をみんなにお勧めするポスターをはりだすこと。もう一つ、院内に空気浄化器を設置し、万が一、ウィルスが侵入しても、空気を浄化して、ウィルス除去できるように努力することです。そこで、患者さん側にはまず、症状の出始め2日以内に、受診することをおすすめします。そして、インフルエンザの検査を受け、陽性の場合は、抗ウィルス薬を速やかにのみ始めることが重要です。ウィルスが、増殖しきってしまってからは、お薬が、効かないので、初期に適切な、投薬をうけ、治療を開始することです。この場合の、ウィルス検査は、インフルエンザかどうかを調べる、10分から、15分で結果がでる、キットを用いますので、2週間も待たなくて良いし、お薬の効果も適切だと、翌日には、熱が、すとんと下がって、とても楽になるようです。(本当にお薬が、効いた人は、本当にインフルエンザだったのかって疑うくらい、劇的にききます。)これは、インフルエンザの怖い、悪い結末にできるだけ、みんなが、いたらないように、医学の世界で、研究と、開発をしてくれている、多くの人たちのおかげで、早く、検査できるキットの存在と、タイミングさえ間違えなけば、ほかのウィルスは、こんな風には検査できないので、(SARSもまだ、キットでは検査できないので、)検査して、陰性だったときには、やはり、症状にあわせた対症療法になります。 ここで、藪患者にならないように、知っておいてください。

予防接種をしておけば?

インフルエンザの注射をしておけば、絶対なにがあっても病気にならない訳ではありません。ひとによっては、注射を打ったことによって、副反応があらわれて、調子を崩すことも確かにあります。日常の生活で、十分な睡眠、栄養、水分補給、精神の安定、を確保することをおすすめします。予防接種をしたひとで、ふつうの風邪もかかりにくかった。と喜んでくださる名患者さんが、毎年何人かいらっしゃいます。きっと、注射を受けようという気持ちと同時に、病気を寄せ付けない日常の努力が、知らず知らずのうちにできていたからだろうと思います。
風邪を引きやすい方は、日常の健康管理を思いかえしてみてください。それと、悪性疾患や糖尿病などの、免疫機能が低下する病気がかくれていないか、健診をすることをおすすめします。
風邪は万病のもと、といいますが、風邪症状の出始めは十分注意が必要です。本当に万病の初発症状が、風邪様症状であり、千病の合併症が風邪であります。そして、風邪をこじらすということばが、意味するように、初期の治療を誤ると、ひどい状態に陥ることがあります。十分肝に銘じて、今年の冬は、元気にのりきりましょう。

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