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    37. 37.くさいものにふた?
    38. 38.へぇーボタン
    39. 39.多数決でいいの?
    40. 40.認知症考
    41. 41.反省だけなら
    42. 43.手洗いうがい歯磨き入浴
    43. 44.インフルエンザ豆知識
    44. 45.SOS
    45. 46.おしっこのはなし
    46. 47.メタボリック症候群
院長のエッセイという名のこぼればなし
開院当時から院内で公開してきたエッセイです。
通常の診察では伝えきれない、日常の健康に関するお話、
母として感じたあれこれを紹介いたします。

08.おっぱいのはなし

女性の外科医ということで、私にもとめられる仕事として、女性の肛門疾患と、乳腺の診察があります。
今まで、病院勤めのときにも、その市町村の乳がん検診の出動を依頼され、出向くのですが、男の先生にまじって、私がいますと、特にお若いかたなどは、ご指名で、私のところに並んでくださることが、多かったです。まだ、駆け出しの外科医だったときに、教授から、「乳腺を専門にやってみないか」といっていただいたことがあります。
それこそ、駆け出しだったので、「乳腺だけでなく、胃も、腸も、肝臓も、勉強したいです。」と答えてしまったのですが、開業して、患者さんのご要望をじかにきくと、女性の体特有のものを、女性が診るということの大切さを感じています。乳腺の病気に関しては、検査法も治療法もどんどん進歩しています。
私もマンモグラフィの読影について、勉強会に参加させてもらって、(それこそ、毎日が、勉強ですから)今の進歩に追いつく努力をしました。
その勉強会は、それこそ、受験勉強の直前合宿さながら、教室に、県下の医師が数十名集められ、丸2日間の講習と、実際のマンモグラフィの読影の試験がありました。その講習のなかで、乳ガンにならないためには、18歳までに子供を産んで母乳で育てるのがいいと習いました。私は、36才で初めて子供を産んだので、乳ガンの危険はまだある状態ですが、確かに、いろんな患者さんを診察していて、また、自分のおっぱいをさわってみて、母乳をしっかりあげたあとの乳腺は、がんができにくい、やわらかい組織に変化したように思えます。疫学的には(統計的には)若くて、子供を産む人の方が、子宮けい癌がふえるという結果は出ているようですが、乳ガンについては、早く、子供をうんで、かつ、母乳で育てるのが、いいそうです。

赤ちゃんとお母さん

おっぱいについて

私の母は、思春期が戦争時期と重なり、栄養をしっかり摂らなければならない時に、ものがない時代だったらしく、その影響か、私を産んだ時、しっかりおっぱいが出なかったようです。だからわたしは、牛のおっぱいで育ったのです。(つまり、牛乳)私自身は栄養満点の食事を摂らせてもらってきたので、おっぱいがいっぱい出て、上の子も下の子も、母乳でしっかり育てることができました。悩みはどうやって、乳離れさせるかで、3才になる下の子がまだ、寝る前には、おっぱいが、必要な状態です。 上の子はもう2年生なので、今となっては、自分は3才でおっぱいをやめたと言い張っていますが、じつは下の子ができるまで、おっぱいがほしくて、そろそろ出なくなったママのおっぱいが、弟か妹ができたら、また出るようになると思って、赤ちゃんがほしくなったのが本当のところです。お兄ちゃんより小さく生まれた妹は、はじめ上手におっぱいがすえなくて、おっぱいがはった母を助けるため、頼んで、お兄ちゃんにも飲んでもらったりしました。
ある日、かんかんにおっぱいがはって、触診すると、一部しこりの様にふれるところがありました。状況的に、経過を考えても、うつ乳の状態で、かたくふれているだけなのに、もしかして、これが悪性の腫瘍だったらと、とても不安になったことがありました。患者さんが心配になって、診療所に飛んでくる気持ちが、よーくわかりました。私は、とにかく助産婦さんに、マッサージをお願いしたくて、産院の外来にとびこみました。その際、うつ乳の対処法をおしえてもらい、結局、娘とお兄ちゃんの協力を得て、うつ乳が解決して、しこりも触れなくなりました。

乳腺の自己診察の仕方

ここで、乳腺の自己診察の仕方について、記しておきます。
時期は、その月の生理が終わったころ、排卵期までの間がいいでしょう。生理前に、乳腺が張って痛いという方がよくいらっしゃいますが、ホルモンの影響で、生理前には、乳腺は刺激をうけて、張った状態になっていることが多いのです。ですから、その影響のとれた時期に毎月、自己診察をすることをお勧めします。とにかく自分の手でじっくり、手を滑らせるように動かして、乳腺にいままでなかったしこりができていないかをみてください。今まで、しこりがあった人は、(とりあえず、一度は受診してみてもらってください。)以前と、大きさ、硬さ、表面の状態、動き、が変化ないかみてください。変化がみつかった時は、必ず受診して確認してもらってください。特徴をわかりやすく説明すると、皮膚の下にあるしこりが、くだものでたとえるなら、らいち(中華料理の果物)のような表面のごつごつした感じで、すこし硬いようならガンの可能性が高いです。さくらんぼのような表面のつるんとして、やわらかめのときは良性の腫瘍であることが多いです。みかんやはっさくの薄皮の下のつぶつぶのような小さい粒(少し大きめでも)を触れるときがありますが、これも良性のもの、袋状になっていて中に液がたまったようなものであることが多いです。次に乳頭からの分泌液がないかどうかも、しぼってみてください。血液の混じった液が出るときは要注意です。脇の下にグリグリがないかもみてください
転移したときに一番始めに来るのが、脇の下のリンパ節であることが多いです。(脇にグリグリがあっても、リンパ節でない場合も多いですが、リンパ節の腫れは、腫瘍そのものの特徴のようには悪性と良性を区別しにくいので、腫れていたら、お医者さんにみてもらってください。悪性でなくても処置の必要なグリグリが多いですから。)痛みだけの症状の時は前述のホルモンの影響をうけているだけか、大胸筋の筋肉痛のことが多いようです。何か異常のあるときは多少の経過をみたとしても、何ヶ月や何年も放っておかずにちゃんと検診してもらうことが肝要です。
ガン検診に関しては、最近いろいろと新聞や報道で目や耳にしますので、お詳しい人もいるかと思います。
現行の触診だけの検診では、不十分で、マンモグラフィを導入して、早期の手に触れない腫瘍も見つけるべきだというのが、今後の傾向です。ただ、だから、触診の検診が無意味というわけではありません。手にふれる腫瘍を触診で、見つけて(もらって)、適切な治療のすえ、お元気で、生活している方を大勢知っています。私の知っている手に触れる腫瘍で、一番小さい時期にみつけてもらった人は実は、ご主人が見つけられたものでした。(このご主人はお医者さんではありません。)私のお師匠の男の先生が「俺も、嫁さんの腫瘍みつけられるよう触診しとかなあかんなあ」としみじみおっしゃっていました。
今までなかったものが、できている。というその変化をみつけるために、日常から触診をしておきましょう。自分でも、だんなさんでも。乳がんの特徴やいろいろな情報で、知識を増やすのはいいことですが、どの情報にも例外がありますので、藪患者にならないように注意しましょう。
痛みだけの時は癌でないことが多いと書きましたが、痛い乳がんもあります。(炎症性乳がん)乳ガンは男の人にもあります。(男性乳がん)両方の乳房にできることもあります。(転移のことも、同時発生のこともあります。)授乳期や妊娠中に見つかることもあります。20代前半の若い人にもあります。
ぺちゃぱいの人にもあります。脇の下のリンパ節だけが先にわかる場合もあります。そして、手に触れない、特殊な癌もあります。ホルモン療法を受けていたり(ピルを使っていたり)、血縁の方に乳ガンの人がいる場合は、特に、手に触れないからと放っておかないで、マンモグラフィを撮影できる病院を受診し、確認してもらいましょう。
乳ガンはおっぱいをとるだけで治らない場合もありますし、おっぱいを残しても治療できる場合もあります。心配なときに放置しないこと、日常の自己検診と、年に一回の検診受診をおすすめします。 おっぱいの話は、実はこれだけでなくいろいろネタはあるのですが、また、機会があればお話しします。

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