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    41. 41.反省だけなら
    42. 43.手洗いうがい歯磨き入浴
    43. 44.インフルエンザ豆知識
    44. 45.SOS
    45. 46.おしっこのはなし
    46. 47.メタボリック症候群
院長のエッセイという名のこぼればなし
開院当時から院内で公開してきたエッセイです。
通常の診察では伝えきれない、日常の健康に関するお話、
母として感じたあれこれを紹介いたします。

11.バイキンマンとドキンちゃん

私の診療所はときに小児科のように子供さんがあふれかえっています。
予防接種を団体で打ちに来てくれる患者さんがいたり、ご近所の子供さんは、私や、看護婦さんによく慣れて、病気でない時も寄ってくれたりすることがあるからです。
待合室には少しだけ、人形やおもちゃを置いてあります。中でも人気なのが、アンパンマンの仲間です。どうやら子供たちは、丸顔でころっとした体型のキャラクターが好きなようです。アンパンマン以外に人気のキャラは、ドラえもん、ミッキーマウス、くまのプーさんです。共通するのは丸顔、ころっとした体型といえます。わが診療所のノユリタヌキ(信楽焼)も丸顔のころっとした体型、そのモデルとなったノユリ先生は、子供たちのこうした好みを、分析した上で、ころっとした体型を維持するよう、日夜努力を重ねています。子供の気持ちの分かる、自分にも子供のいる女医さんですから、看板に小児科を掲げなくても子供の患者さんが来てくれるのだろうと思います。

ばい菌達

診療所のヒーロー

アンパンマンのキャラクターは、診療所にもってこいです。バイ菌やカビのキャラが悪者でこれらをやっつける善玉がアンパンマンというわけです。
患者さん本人がアンパンマンになって、もしくは、アンパンマンの力を借りて、バイ菌やカビと戦うわけです。カレンダーや薬袋など、いろんなところにアンパンマンを施して、子供たちが(場合によっては、大人もアンパンマンの力を借りて)楽しく、病気やケガと戦えるように、診療所の中を工夫しています。
子供さんによっては、アンパンマンの仲間でも、メロンパンナちゃんが好きだったり、ホラーマンが好きだったり、ロールパンナが好きな女の子もいたりします。うちの理冴は、わがままなキャラクターそのままに、ドキンちゃんが好きなようです。みんながみんなヒーローだけが好きというわけではないのです。看護婦さんの子供さんは、うちの子と一緒にお母さんの仕事の時間を保母さんと過ごしているのですが、兄弟のように毎日いるので、お互いの好みが十分理解できてきています。
ドラえもんやアンパンマンのキャラはゆうや君のものだと理冴も言いますし、ゆうや君もドキンちゃんが出てくると、「りこちゃんのドキンちゃん」と認識しているようです。 毎晩、子供の仕上げ歯磨きをする看護婦さんは「バイキンマンをやっつけようね」と言って、磨いてあげるのだそうです。「バイキンマンはやっつけてもいいけど、ドキンちゃんはやっつけないでね」とゆうや君が言うそうです。お友達の理冴ちゃんのドキンちゃんを残してほしい、そういう願いだったようです。 ところが、3歳の坊やのこの一言の中に、医学的にとても大事なことが隠されています。
悪玉菌と善玉菌という考え方があります。人間は生命を維持する中で、実は色々な細菌と協力し合って(細菌に助けられて)生きているのです。超有名なところは、ビフィズス菌です。この腸内菌の善玉菌のお陰で腸の消化吸収を助けられているのです。また、善玉菌の存在が悪玉菌の発生を抑えることが出来るのです。体の中に常にいる善玉菌を常在菌と言います。女の人の膣の中にも常在菌がいます。人によって、抗生物質が合わなくて膣炎を起こすことがあります。抗生物質が善玉の常在菌を殺してしまって、菌交代現象が起こるからです。口の中にも喉にも常在菌がいます。先日、新しい抗生物質の発売記念講演というのを聞きに行きました。
Y大学の教授のお話の中で、抗生物質の正しい使い方というのを習いました。(簡単に言うならば、必要ないのに抗生物質を使いすぎるとよくないと言うお話しです。)耐性菌と言って、抗生物質が効かない菌をつくってしまうからです。イソジンのうがいをすることの功罪についても触れられていました。イソジンうがいはSARSの予防にも効果的であるというデータが出ているそうです。ただし、1日3回くらいが適当で、5回も6回もうがいをすると、常在菌を殺してしまうのでよくないということでした。人間のなかの常在菌は悪玉菌の侵入を防ぐ働きもしています。ですから、イソジンでうがいをしすぎて、常在菌を殺してしまってはいけないのです。バイキンマンがあとから侵入したバイ菌として、ドキンちゃんを常在菌とすると、口の中のバイキンマンは殺さないといけないのですが、ドキンちゃんは殺したらダメと言うわけです。

有名な耐菌性“MRSA”

耐菌性の中で有名なのが、MRSAです。薬剤耐性黄色ブドウ球菌です。落下細菌の実験で、どこでもブドウ球菌は見つかるのですが、これが形を変えて、薬剤耐性に変化したことにより、治す薬がない、怖い肺炎の原因菌として一躍?悪玉のブラックリストにあがってしまったのです。
もともと抗生物質というのは、バイ菌の培地の青カビの周りには菌の生えない所があることを発見した偉い先生が、青カビからペニシリンを作ったのが最初です。菌に菌で対抗するので、抗生物質です。

常在菌について補足

常在菌の話しで専門的な話しをひとつ。
口腔内や咽頭に常在する菌に、インフルエンザ菌というのがいます。たしか、インフルエンザの話しの時に、「インフルエンザはウイルスです」と聞いたぞ、と思い出していただけたでしょうか。なぜインフルエンザの名前を持つ菌がいるかというと、それこそインフルエンザの病原が菌かウイルスか分かっていない時代に、インフルエンザにかかった人の咽頭からこの菌が分離されたから、間違ってインフルエンザの原因の菌だと思われ、この名前が付いたようです。常在菌ですから、誰からでも分離されるのは当たり前です。
その後、インフルエンザはインフルエンザウイルスによって感染すると分かったのですが、この口腔内の常在菌はインフルエンザの名前を付けたまま残っています。この常在菌がまた耐性を作って、病原菌化して、肺炎や中耳炎の起因菌として注目されているようです。耐性菌の生まれる大きな原因は、不要に中途半端に抗生物質を使いすぎていることです。風邪のほとんどはウイルスが関与していますから、風邪イコール抗生物質という考え方を改めるのが必要です。反対に風邪に合併する細菌性の病態には、それに見合う抗生物質の投与が必要です。風邪の時に抗生物質を併用する目安は、高い熱が続く、鼻汁に色が付いている、のどの痛みが強い、などのうちひとつまたは、複数当てはまる時と考えるといいようです。 医者の側もむやみやたらと抗生物質を出すのをやめなければならないのですが、患者さん側も必要な知識として、抗生物質をくれない先生を理解できるようになってほしいです。抗生物質はどの菌に効くかで何種類も存在します。しかし、患者さんは「何々菌です。」と菌の名前を教えてくれるわけではありません。我々医者は、症状や状態から察して、効きそうな抗生物質を投与するようにします。ですから、すぐに効く場合と、すぐに効かない場合がありますが、それは、ついた菌の種類と症状の出方と、医者への話の伝わり方で、違うと思って下さい。インフルエンザウイルスの迅速診断キットは例外的で、診療中に10分から15分待てば診断が下りますが、一般細菌の培養、同定は、採血や採尿、もしくは、痰やぬぐった膿を検査に出して1週間ほどかかります。その結果を見てから投薬するのでは遅いので、まずは予想して投薬するしかないのです。
取りあえず皆さんは、うがい、手洗いで、バイキンマンをやっつけておいて下さい。ドキンちゃんは大事にして下さい。「過ぎたるは及ばざるが如し」を思い出して、うがいのしすぎ、抗生物質の飲みすぎはやめましょう。

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