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    41. 41.反省だけなら
    42. 43.手洗いうがい歯磨き入浴
    43. 44.インフルエンザ豆知識
    44. 45.SOS
    45. 46.おしっこのはなし
    46. 47.メタボリック症候群
院長のエッセイという名のこぼればなし
開院当時から院内で公開してきたエッセイです。
通常の診察では伝えきれない、日常の健康に関するお話、
母として感じたあれこれを紹介いたします。

12.健康診断のすすめ

最近、医療費の自己負担割合が増えてきているため、患者さんの受診控えがあるようです。先日も、糖尿病は前から知っていたけれど、その都度窓口で支払う負担金が続かなくて、治療を中断していたという方がいらっしゃいました。私はこの方を藪患者とは呼べませんでした。昨今の医療費に関する厚生労働省の改正は、改悪ともとれる、納得のいかないものが多いように思われます。
点数が下がっても負担割合が増えると、患者さんの支払う金額が多くなります。医者が儲けているわけでもなく、患者さんが得しているわけでもない。いったい誰が得しているのでしょう。しかも、ことによると患者さんの受診控えや、投薬内容の変更、検査控えで本来の病気の治療が足踏み状態になってしまわないとも限りません。しかし、国が制度をいじるのには理由があります。医療費が国の財政に占める割合がだんだん大きくなって、他に支障をきたそうとしている実際と、その裏にある薬づけ、検査づけの患者さんをつくりだした無駄遣い医者の存在が否定できないのも事実です。今後は医者側も患者側も制度を理解し、上手に制度を利用しながら、健康を維持できるようにするのがいいでしょう。そこで、私の一つの提案は、健康診断(住民検診)を積極的に受けることです。
現在、医療費の自己負担割合は、国民健康保険も、社会保険の本人の場合も、3割負担になっています。ところが、住民健診(健康診査)は実質約1割の負担で血液検査、尿検査、心電図、レントゲンとかなりの範囲の検査を受けることができます。また、検診代のなかには、初診料、もしくは再診料が含まれています。うらわざを伝授しますならば、健診を受けて結果を聞きに行ったときに、ついでにかねてから気になっていた箇所を診てもらって、投薬を受けることです。健診と別なときにかかったならば支払わねばならない初診料が健診代の中に含まれていますので、患者さんの負担が若干軽くなるというわけです。もちろん重要な病気があることが疑われる人は、健診ではなく、きちんと受診することを勧めますが、そこまでひどくない、でもお薬があるといいなという症状はこういうときにかかるといいでしょう。(同一月内に受診するのが、保険の取り扱い上、お得になります。)検査もついでに気になる項目を追加してもらったりすると、採血は1回ですみますし、採血の手技料などは、健診代に含まれていますのでお得というわけです。 制度的には、混合診療の禁止といって、医療保険を使っている保険診療と、自由診療(実費負担の診療)を同一日に受診させることを禁止しています。しかし、患者さんの利益になるように、診療所側が配慮することは、だんだん認められつつあるようです。
たとえば、いつものお薬をもらいに来たおじいちゃんが、ついでにインフルエンザの予防接種を受けたいといったとき、「別な日に来て下さい」と言わなくて良いという見解が出たと言うことです。健診の時に何かを追加すること、結果説明の時に投薬を開始することで、患者さんの負担を軽くし、早期に健康を守る行為は禁止されるべき行為ではないと考えます。
もうひとつ本来の健診の意味としては、本人が気づかないうちに徐々に蝕んでいる病気を症状が出る前に見つけることです。早期発見し、きちんと治療することです。多くの場合、病気は早めに治療する方が簡単で、経済的にも軽い負担で済むのです。もちろん病気が見つからなかったら支払わなくていい出費が、見つかったことによって増えるわけですが、放置しておいて、緊急で処置をしてもらわねばならなくなったときは、負担がもっと大きくなることが予想されます。健診はもちろんその結果を素直に受け容れて対応することが、最大の意義であることを忘れないで下さい。健診でチェックしてくれる病気は血圧、高脂血症、糖尿病、貧血、肝機能異常、痛風、腎機能異常、心電図異常、胸部レントゲンによってわかる、肺ガンや結核を含めた肺疾患などです。年齢制限や、条件制限はありますが、肝炎の検査や、大腸がん検診も健診項目に入っています。ただし、きちんと結果を受け止めて、追加検査、二次検診を受けることが正確な診断のためには、必要なときがあることを認識しておいて下さい。

健康診断で問診を受けている様子

なぜ健康診断をおすすめするのか?

藪患者さんたちは、自分の都合のいい検査だけを受けて、検査が痛いと聞けばそれはやらない。別な日に出直さなければならないと、やっぱりやらない。異常があるといわれたら、精密検査がやりたくない、だから受けたくなかったんだとぼやくわけです。その上、大藪患者さんは、医者にかかっていたのにこんな病気にかかってしまった。と、ぼやく時があります。せっかく見つかった病気を早く見つかって良かった。と思える方が、病気と上手に戦える銘患者さんです。
大腸がん検診の便の検査を拒否する人の多くは、二次検診の大腸ファイバーが苦しい検査だと聞いて、それをやりたくないからという理由のようです。私は「まずは便だけとって、簡単な検査はしておきましょう。その後のことは、その結果が出てから悩みましょう。」と半ば強引に大腸がん検診を勧めるときがあります。しかし、この大便に血が混じっているかどうかを調べる検査が、非常に多くの患者さんの命を救ってきたことを知っているので、なるべく多くの人に勧めるのです。
「ほんまに助かったわ、知らんで放っておいたら、死んでたかもしれんもんな。」と、しみじみとおっしゃったおじさんがいました。 みなさんが、苦しいからいやだと思う大腸ファイバーも、考えてみれば、手術をしておなかの皮膚や筋肉を切開して、病変に達して処理することに比べれば、なんと楽な、夢のような処置であることかといえます。うんこのはなしにも書いたように、大便には外から見えない、体の中のメッセージが含まれているのです。
年に一回は、便の検査を受けましょう。残念ながら、一般に(草津市、栗東市も)住民検診では、大腸がん検診の対象は、40歳以上ということになっています。しかし、大腸がんや胃がんが、40歳未満には発症しないという訳ではないのです。(若い人ほど、まさかという気持ちがあり、知らず知らずに進行していて、大変な状態になってしまっていることがあります。)
気になる症状があるときは、必ず相談しましょう。
女性の貧血も要注意です。月経過多や、食品の摂取のアンバランスでも起こりますが、胃潰瘍や、胃がんが徐々に出血していて、貧血がすすんでいることがあります。医者が、胃カメラを勧めたときは、一回はのんでみましょう。胃カメラもいやな人は多いですが、中をのぞける大切な検査です。(この私も3回は、胃カメラをのんだことがあります。) 若くして重い病気にみまわれた患者さんを何人も知っています。もし、症状の出始めに相談してくれていたら、検診の時に、もう一つ検査を受けていてくれたら、後悔にも似たとても残念な気分になる状況だった患者さんも含まれています。
藪患者といって、患者さんの責任にできない部分があります。藪医者が、説明不足の事もあります。藪制度の(制度自体が良くない)ために、患者さんの受診控えが病気の早期発見、早期治療を遅らせていることも否定できません。せめて、健診を受けましょう。 学問のすすめならぬ、健診のすすめです。そろそろ受診のハガキがお住まいの市からおうちに届いている頃だと思い、今回はこの話にしました。

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